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4. 赤血球グループ(責任者:西村)

発作性夜間ヘモグロビン尿症(Paroxysmal Nocturenal Hemoglobinuria;PNH)は、GPIアンカー型蛋白異常を伴う造血幹細胞疾患であり、さまざまなGPIアンカー型蛋白が血液細胞で欠損す る。GPIアンカー型蛋白の欠損はGPI合成の最初のステップ(ホスファチジルイノシトールにN-アセチルグルコサミンを付加する反応)に関与する PIG-A(phospatidylinositol glycan class-A)遺伝子の体細胞突然変異によるGPIの合成不全が原因であることが、大阪大学微生物病研究所免疫不全疾患研究分野(木下研)との共同研究 により明らかにされた。


しかし、このようなGPIアンカー欠損細胞が末梢血で正常細胞を凌駕して優位に増加するのにPIG-Aの異常だけで十分であるかを調べたところ、 Pig-aノックアウトES(embryonal stem)細胞を用いて作製したキメラマウスやPig-aノックアウト骨髄細胞の移植実験ではPig-a破壊によるGPIアンカー型蛋白の欠損だけでは異 常幹細胞は優位に増殖しなかった。


現在我々の研究室ではPIG-Aの突然変異に続く異常幹細胞のクローナルな拡大のメカニズム(第二の異常)について木下研と共同で解析中である。


再生不良性貧血の経過中にPNHを合併する症例がみられることから、GPIアンカー欠損細胞の拡大メカニズムには免疫学的機序が深く関わっている可 能性が指摘されている(選択説)。しかし、末梢血のほとんどの細胞がGPIアンカー欠損細胞でしめてしまうようなPNHでは、そのような免疫学的機序に加 え、GPIアンカー欠損細胞自身にさらなる異常がおこり、良性腫瘍的に拡大している可能性も考えられる(良性腫瘍説)。我々の研究室では、GPIアンカー 欠損細胞に12番染色体異常のある症例を経験し、その異常を詳しく調べた結果、その染色体異常の切断部位に転写促進因子HMGI-C(HMGA2)を同定 した。この遺伝子の異常は間葉系良性腫瘍において高頻度に認められるもねであった。本症例では、HMGI-Cの生体での発現抑制に関与する3'UTRの3 分の2を失っており、その蛋白の異常発現を予想させた。現在、マウスを使った実験や他のPNH症例によるHMGI-C関与の普遍性を検討している。


その他、PNHの新規治療薬であるEculizumab(ヒト化抗C5抗体)に関連した臨床研究、核酸医薬(RNAアプタマー)を用いた新規治療法の開発などを行っている。




2009年6月一部改変