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―序― 血液・腫瘍内科学講座~開講20周年を祝って

血液・腫瘍内科学講座~開講20周年を祝って
The 20th Anniversary of Foundation、Department of Hematology and Oncology、Osaka University Graduate School of Medicine

大阪大学大学院医学系研究科血液・腫瘍内科 教授 金倉 譲


本講座は、1993年、国立大学のなかで最初に「血液・腫瘍内科学」を標榜する講座として大阪大学医学部附属バイオメディカル教育研究センターの臨床部門に設立されました。その後、大学院重点化、内科系・外科系講座の臓器別再編成とそれに伴う専攻の改組などを経て、現在は「大阪大学大学院医学系研究科内科系臨床医学専攻血液・腫瘍内科学」という講座名になっています。人でいえば、生まれてから成人するまでという20年の長い期間の中で、大学の置かれた環境も大きく変化してきました。世界第2位の経済大国にまで発展した日本も、講座が設立された頃を境にして右肩上がりの時代から右肩下がりの時代を迎えています。

21世紀は「知の時代」とも言われています。国立大学は、自主努力・創意工夫することにより特色ある研究教育組織を構築し知を創出するという目的で、法人化されました。しかし、法人化に伴い、政府から交付される運営費交付金は、毎年漸減され、研究費調達は各大学の自助努力が求められています。大阪大学は研究費の獲得という意味では恵まれておりますが、一方、地方大学では必要な人数の教員や職員を確保できない事態が発生しています。大学の活動指標として、日本と海外の学術論文数の推移を見てみますと、日本だけが、国立大学が法人化された翌年の2005年頃から学術論文数の増加が鈍化して2007年頃から減少に転じています。これは、国全体としての研究面での国際競争力が低下していることを示しています。また、2004年に始まった初期臨床研修必須化も、医学部や大学病院の活性化には負の要因となりました。以前は、学問に対する興味や憧れや医師としての使命感に燃えて専門科を選択していました。しかし、初期臨床研修必須化後は、過重な専門科や訴訟リスクの高い専門科を選択しない傾向が強くなっています。血液・腫瘍内科も過重な専門科ということになり、全国的に希望者が減少しているのが大きな問題です。ただ、学生の血液学や腫瘍学への興味が失われていることはありません。また、都市部や関連病院との連携が密なところでは、血液学を希望する医師は必ずしも減少していないと思います。

血液・腫瘍内科では、10年前に開講十周年記念誌を作製しました。当時、記念誌を見た方々から、内科学としては小規模ながら極めてアクティブな講座だと高い評価を得られ、そのことは我々の大きな自信となりました。その後、内科系講座の臓器別再編成により旧第二内科の血液グループも合流しパワーアップしました。徐々に教員数も増え日本でも有数の血液・腫瘍内科学講座へと成長してきました。特に、赤血球、白血球、血小板の3系統や化学療法・先端医療などの多種多様な領域における専門家を擁していることは、本講座の特徴であり、また誇りでもあります。右肩下がりの時代にこのように発展出来たことは、同窓会員や医局員の弛まぬ努力の賜物だと思っています。

最近の10年間を振り返ってみますと、まず、診療面では、十年前より臍帯血移植が成人にも行なわれるようになり、当教室でも2003年より臍帯血移植が始まりました。徐々に非血縁者間造血幹細胞移植が増加する傾向です。病棟スタッフの努力により診療の質が向上し成果も上がっています。研究面では、初期臨床研修必須化後しばらくの間、研究に割く時間が減少し成果を出すのが難しい時期がありました。しかし、この数年は極めて良い成果が上がってきています。教育面では、教室員一丸となって、血液・腫瘍内科研修マニュアルを作成するなど、教育に対する熱意は素晴らしいものがあります。医局の先生方の工夫が随所に見られる貴重なマニュアルです。阪大や阪大関連病院の血液内科をまわる研修医にも好評です。人事面では、松村到先生が近畿大学の内科教授に就任されたことは教室や同窓会員にとりまして嬉しい出来事でした。

私にとりましては、激動の10年でした。病院や大学内では、未来医療センター長、卒後教育開発センター長、内科系科長、副病院長、大阪大学理事補佐などの多様な職に就き、経験し学ぶことも多い時期でした。学外では、日本学術振興会の主任研究員を3年間勤めました。毎週のように東京へ日帰りで往復するのは体力的にも容易なことではありませんでしたが、文系、理系の様々な領域の方々と研究の話や雑談が出来る貴重な体験でした。また、日本血液学会の理事長に約4年前に就任し、重責を担うことになりました。国内ばかりか海外の著名な方々と、日本血液学会の方向性や海外の学会との共同事業を決めてゆくのはなかなか骨の折れる仕事です。平成26年10月までの任期ですので息切れしないように頑張りたいと思っています。

本講座開講20周年記念に合わせるように、平成25年11月30日には第100回記念の近畿血液学地方会、平成26年10月31日から11月2日まで開催される第76回日本血液学会学術集会の会長を務めることになっています。学会につきましては織谷先生、松村先生はじめ多くの先生方にお世話になりながらプログラムを作成中です。教室員や同窓会員のご助力ご支援により是非とも成功させたいと思います。最後に、今後の血液・腫瘍内科の益々の繁栄と、教室員と同窓会員の活躍とご多幸を切に願い、挨拶文とさせていただきます。